2019年5月6日月曜日

母親の思い 1

父親が倒れた直後、姉と姉の長女が、私の母親と絶縁すると突然言ったことはこれまで繰り返し述べてきた。父親が倒れて入院した数日後のことであった。ふたりが絶縁を告げたとき、理由は何も話さなかった。私も彼らの発言をあまり気には止めなかった。またいつもの親子ゲンカをしたのだろう程度にしか考えていなかった。

ふたりが母親と縁を切ることを決めた理由は、母親が姉に対してよりも私に少し多めに遺産を残したいと言ったことが理由であることを姉の長女(私の姪)から直接聞かされた。姪は、「お婆ちゃんはお母さんよりもおじちゃんに少し多めに遺産を残したいと言った。だから許さない」と言った。

この姪は、自分の母親(つまり私の姉)が内密でどれほど莫大な経済援助を受けてきたのかを全く知らされていなかった。姉は実家からの援助をひたすら隠し通した。

姉はまとまった金がほしくて仕方がなかったようである。姉が入信しているエホバの証人の最終ステージの講習会を受けるために多額の受講料を支払わなくてはいけなかったらしい。このことは私の従姉から聞かされた。「最終段階の講習会」という表現をその従姉は使った。ということは、姉はそれまでに前段階の講習会を何度か受講し、それなりの受講料を払ってきていたのであろう。姉は母親から受け取った金のかなりの金額をエホバの証人に貢いでいたに違いない。

裁判の席で、姉は、エホバの商人からは一切金の請求はなかった。支払っても千円程度であったと証言したが、そんなはずはない。その従姉の姉も、私の姉の陳述を全く信用しなかった。「人が生きていくためにはお金が必要である。そんなわずかな金ですむはずがない」と彼女は言った。彼女もある宗教に入信しているので、宗教団体の実情をよく知っており、そう思ったのであろう。彼女は、自分も家族も幸せにしない宗教はやめるべきであると私の姉に忠告したが、姉は聞き入れなかった。

話を本論に戻す。

両親には自分が築いた財産を全て使って人生の最期を楽しく過ごしてもらいたいというのが私の希望であった。したがって事あるたびに、お金を使うようにと母親には話した。母親は何回か私が勤務している病院に入院したが、毎回、大部屋であった。個室に入院すればいいのにと私は思った。しかし高知から遠く離れて東京で入院生活を送る母親は個室では淋しいだろうと思った。また、父親は、金銭的なことも考えていたようだ。父親は「幸伸の体面を考えれば、個室に入院させた方がいいかもしれないが・・・・」と複雑な心境をのぞかせた。私は何も意見を言わなかった。両親の財産は両親のものであると考えていたからだ。

父親とも母親とも、私は遺産相続について一切相談したことはない。父親が倒れ、姉と姉の長女から絶縁を言い渡されたあと母親は遺言状を残したが、私はその遺言状の文面は一切読まなかった。その遺言状には母親の遺産の全てを私に譲ると書かれていたようであるが、遺言状を今まで私は一度も読んでいない。母親の遺言状の処理も弁護士と税理士に全面的に委ねた。

姉と姉の長女は、私が両親との間でこっそりと遺産を独り占めする相談をしていたはずだと思い込んでいるように思えるが、馬鹿げた妄想である。そんなことは考えたことすらない。そんなことを思いつく彼らこそ、彼らが私の立場であったら、両親の遺産を独り占めするためにはどうすればいいかと策をめぐらしたことであろう。他人の物を盗んだりだまし取ったりしようといったことは一度も考えたことがない私と私の家内には、そのような発想は全く湧いてこない。

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