2011年5月15日日曜日

幼友達の死

ちょうど一週間前の朝、父親から電話がかかってきた。私の実家の西隣に住む幼友達が亡くなったという知らせであった。

彼は長い間、肝硬変を患っていた。アルコール性の肝硬変であった。数年前には危篤状態に陥ったこともあった。なんとか持ち直したものの、ほとんど家から出ることはなかった。だから昨年の正月、実家近くの氏神様に初詣でに出かけた際に彼の姿を見かけ驚いた。なんと彼は同じ部落に住む人たちと酒を酌み交わしていた。彼は私に向かって笑いながら「もう死なんで!」と言った。私は彼に「お酒は飲まん方がえいで」と忠告したが、彼は私の忠告を気に留めようともしなかった。

それから1年後。今年の正月に彼の家に新年の挨拶に行った。彼は笑顔で私を迎えてくれた。短時間話しただけであったが、元気そうに見えた。

この幼友達は私の隣に住んでいたこともあり、私が中学校に進学するまではよく一緒に遊んだ。当時、彼はめったに笑顔を崩すことがなかった。いつもにこにこしていた。彼の姉は自己主張と自己顕示欲が強かったから、彼の人柄は一層温厚に思われた。

私はこの幼友達を羨んでいた。まず、彼の家庭は私の家庭よりもはるかに裕福であった。少なくとも私の目にはそう見えた。そして彼は父親によく遊んでもらえた。

しかし、成人した後の彼の人生は幸福には見えなかった。彼は地元の工業高校を卒業したあと就職したが、定職についてじっくりと仕事をすることはほとんどなかったように思う。彼の父親も若くして交通事故で亡くなった。結婚生活にも恵まれず、離婚。子もいなかった。

彼がアルコール漬けの生活を送るようになったのも無理からぬところがあったと思う。

彼の家には年老いた彼の母親ひとりが残された。彼の家は遠からず廃屋になる。私の実家の東隣は既に昨年から空家になっている。我が家も両親が亡くなれば廃屋になるであろう。

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