2016年12月19日月曜日

喪中の知らせ

今年も喪中の葉書が十数通届いた。そのうちの2通は大学時代の同級生からのものであった。奥様が亡くなったという。

2人の奥様とは会ったことがあった。彼らが結婚する前のことである。

ひとりのクラスメートは見合い結婚であった。婚約中、私たちの飲み会に奥様(当時はまだ婚約者)を何度か連れてきた。彼は元々、賑やかであったが、酔うとますます陽気になった。そして奥様の目も気にせずに職場の女性たちとチークダンスを踊った。奥様は終始無言で、踊っている彼をじっと見つめていた。私には、奥様が彼を睨みつけているように見えた。そのときの奥様の険しい表情が今も忘れられない。

その奥様が重病で入院していると聞かされたのは2年近く前であった。彼のお父様から聞かされた。見舞いに行きたかった。しかし彼は奥様の病気を家族以外には伏せておきたいと思っているということであった。

奥様の訃報が届いたのは1年ほど前であった。

2か月ほど前に彼に会ったとき、彼はすっかり元気になっていた。しかし奥様が亡くなった直後には、体重が10キロ減っていたということを、その後、他の同級生から聞いた。

もうひとりのクラスメートの奥様は、彼が大学生のとき、ダンスパーティで知り合った女性であった。彼女の実家は埼玉県。そこから文京区の女子大学に通っていた。

彼はよく彼女の自宅を訪れたという。彼らしいのは、彼は玄関からではなく、トイをよじのぼって彼女の部屋にこっそり忍び込んでいたということである。

私は結婚と同時に武蔵境から西荻窪に転居したが、彼らはちょうどその頃、吉祥寺に住んでいた。学生結婚した彼らには、すでに一人の男の子がいた。一度だけであるが、私の妻といっしょに彼らの家を訪ねたことがあった。そのとき、彼の奥様はずっと自分の息子の自慢話を私と私の家内にし続けた。いかに自分の息子がお利口な子であるかを事細かく語った。

私たちにはまだ子がなかった。しかし、来客に対して自分の息子の自慢話しかしない彼の奥様はきっと女性として「正常」であり、母としてもきっと幸せなんだろうと思いつつ私は帰宅した。30年近く昔のことである。

その奥様も亡くなった。

人生は短い。


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