2016年6月16日木曜日

腕時計

数日前に息子の腕時計が見当たらなくなった。その腕時計が息子の布団の中から出てきた。腕時計を見つけた家内が「よかったー」と大声で喜んだ。

そのとき、私はしばらく書斎の小物入れのなかにしまったままになっていた父親の腕時計のことを思い出した。そしてその腕時計を慌てて探した。腕時計は窓際の小物入れのなかから見つかった。埃にまみれていた。そして止まっていた。十時ちょうどを指し示していた。

この腕時計は、父親が私の家に来たとき、私が腕にはめていたのを見て、「その腕時計をくれ」と言って、私がいいとも言わないのに勝手に実家に持って帰ったものであった。私が実家に帰ったときには、父親はいつもその時計を左手にはめていた。

3年前、父親が二度目の出血性脳梗塞で倒れた後、実家でその腕時計を見つけた私は、それを東京に持って帰った。その時には、それが間もなく数少ない父親の形見になろうとは思いも寄らなかった。

私は腕時計をウェットティッシュで丁寧に拭いた。そして書斎のテーブルの上に置いた。この時計は太陽光充電式である。明日の昼になれば、また父親が生きていたときのように再び時間を刻み始めるであろうか。


0 件のコメント: