2016年7月2日土曜日

訃報

昨夜、新幹線で盛岡にやってきた。きょうから盛岡で開かれる学会に出席するためである。昨夜遅くホテルにチェックインしたあとメールを確認すると,友人から訃報が届いていた。彼のお父様が亡くなったという。淡々と事実だけを伝える内容であった。

彼は早くお母様を亡くした。歯科医師であったお父様も脳梗塞で身体が不自由になった。彼が今の奥様と結婚した理由は、彼女が自分の父親と同居すると言ってくれたからであると,彼の口から直接聞いたことがある。彼には一人の妹さんがいるが、この妹さんも若くして脳出血で倒れ、ほとんど意識もない状態で病院に入院しているということである。

しかし彼は、暗い表情を見せたことはない。いつも前向きである。彼はお父様と同じ歯科医師であるが、手術がうまくなりたいというのが彼の口癖である。彼は勉強にお金を費やすことを厭わない。つい先日も奥様と一人のお子様を連れてニューヨークに勉強に行っていた。つい3日ほど前に帰国したばかりである。彼が帰国した直後にお父様が亡くなった。

彼にもし悔いがあるとすれば、わずか1週間程ではあるが、お父様が亡くなる直前にお父様の傍から離れたことであろう。

彼の妹さんにはほとんど意識がない今、彼のお父様の死を心から悲しむ人は彼しかいない。彼の奥様も悲しみはするであろうが、彼の悲しみほどではないであろう。まだ幼い彼のお子様は「おじいちゃんが亡くなった」ということの意味すら理解できないかもしれない。

そうではあっても親戚や友人が彼の悲しみを分かち合ってくれれば、いくばくかでも彼の悲しみは和らげられる。彼のお父様の葬儀に関する連絡はまだない。私が帰宅するのは明日の夜遅くになるが、なんとか時間の都合をつけて葬儀に参列したい。

私は、彼がいまどれほど自分の父親の死を悲しんでいるのかを想像できる。私自身が両親を亡くしたからである。私は両親を亡くしたあと、ずいぶんと人に対して優しくなったと思う。彼も両親を亡くした。彼が悲しみから立ち直ったとき。彼の心境にも何らかの変化が生じているにちがいない。

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