姉との遺産分割協議の過程でもうひとつ腹が立つことがあった。
私は中学校、高校、大学と12年間、日本育英会の奨学資金をもらっていた。そして卒業後に約10年間かけて完済した。完済したのはドイツ留学の前であったから、おそらく35歳の頃には完済していたのではないかと思われる。当然、自分で払った。
ところが、遺産協議のなかで、姉は奨学金を両親に頼らず自分で還したことを証明しろと言ってきたのだ。
驚いた。自分が学生時代に受けた奨学金は、卒業後に自分が還すのが当たり前ではないか。親に頼って奨学金を返済することなど、私は考えたことすらなかった。
しかし怒ってばかりもいられない。私は日本育英会の事務局に電話をかけて私の記録が残っているかどうかを尋ねた。電話に出た事務員は、奨学金が完済されたならば、その5年後に記録を全て削除するので、私の記録は20年以上前に抹消されているはずだと答えた。
ただ、姉が私に問いただしているのは、奨学金を返済する金を出したのは両親ではなかったのかということであった。バカバカしいとは思ったが、一応、古い預金通帳を調べた。当然のことであろうが、奨学金返済を証明する記録は通帳にはなかった。当時、奨学金の返済方法は特殊であった。旅館の宿泊台帳のような細長い振込用紙が送られてきた。毎回の返済額も自分である程度決められるようになっていた。
奨学金の返済は年に2回であったように記憶している。かなりまとまった金額を毎回振り込んだ。まだ薄給であった私には堪えた。家内にも申し訳なく思った。
私にこのように詰問してくる姉は大学には進学しなかったが、高校は私学であった。しかし姉は高校在学中、奨学金を受けなかった。申請すらしなかった。
身勝手な姉である。
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