2020年4月11日土曜日

小遣い

私が幼い頃、姉と私の小遣いは一日五円であった。隣りの家に住んでいた姉弟の小遣いは一日十円。倍であった。このことに私の姉は愚痴をこぼしていた。母親に対して、小遣いを増やしてくれるよう、しょっちゅう要求した。時期は定かではないが、それから何年かして姉と私の小遣いは一日十円に増えた。しかしその時には既に隣家の姉弟の小遣いは一日二十円になっていた。

私は、小遣いが隣家の姉弟よりも少ないことで愚痴をこぼしたことはなかった。私がよく一緒に遊んだその姉弟の弟の方は、私よりも小遣いが多いことをほとんど自慢しなかったからかもしれない。姉が一緒によく遊んでいたその姉弟の姉の方は、弟とは対照的に、自分の小遣いが多いことを姉に自慢したらしい。少なくとも私の姉はそう言った。

私と私の姉の大きな違いは、私は自分の置かれた境遇と他人の境遇とをほとんど比較しようと思わないのに対して姉は何事につけても他人と自分とを比較することであろう。子供の頃から、姉の口から出るのは、愚痴と他人の悪口ばかりであった。この姉の性癖は生涯変わらないだろうと思う。私の目には、姉はこれまで平均以上に幸せな人生を送ってきた。何年か前に夫は亡くなり寡婦となったが4人の子供は皆立派に育ち、既に多くの孫もいる。誰の目にも、少なくとも姉の晩年は恵まれた人生に見えているはずである。

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