2014年6月29日日曜日

大震災

東北地方と関東地方を襲った大震災から3年が経過した。あの日の出来事は生涯忘れないだろうと思う。

地震を最初に感じたのは3月11日の午後2時40分頃であった。その日は金曜日。私はまだ午前中の外来診療を続けていた。

激しい揺れであった。病院の建物が大きく縦に揺れた。私は、とっさに診察室の隣の部屋の机の下に潜った。残っていた最後の患者さんは私の診察用の机の下に入ってもらった。診察についていた一人の女性看護師が右往左往しているので、私は「どうしたの? 隣の机の下に潜れないの? 太っていて入れないの?」と大声で叫んでゲラゲラ笑った。

天井が崩れて下敷きになる可能性があると思った。しかし不思議なことに、私は妙に冷静であった。死の恐怖はなかった。死んでもいいやと思った。それまでの自分自身の人生に対する悔いが湧いてくることはなかった。

全ての電車が止まった。当然、私はその晩、病院で夜を明かすことになった。床の絨毯の上にハイキング用のマットを敷き毛布をかぶって寝た。寒かった。寒さと余震のために感度か目を覚ました。

多くの患者さんも病院で一夜を過ごした。どこに保管していたのであろうか。職員が飲み物と毛布を患者さんひとりひとりに配った。数少ない公衆電話には長い列ができていたが、誰もがじっと静かに並んで長時間自分の順番を待っていた。大声で騒ぎ立てる患者さんはいなかった。幸いなことに、病院には非常用の発電機器が設置されているため、最低限の光は夜間でも得られた。

あのような大災害のなかでの職員の対応と患者さんたちの落ち着きに私は心を打たれた。しかし私が寝ている間に東北地方であれほど多くの人命が奪われていたとは想像していなかった。


死とは永遠の別れである。死んだ人は生き残った人たちの心の中に悲しみとして残る。そして、生き残った人たちはその悲しみを生涯抱えて生き続ける。

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