2007年3月12日月曜日

ある母と子

数日前の帰宅途中、心痛む出来事があった。

山手線の高田馬場駅で一組の母子が乗車してきた。母親は35歳ほど。連れている子供は3歳ほどの男の子であった。

この男の子と母親とは立ったまま仲良く会話していた。私もかわいい男の子だなと思い、時々視線をその母子に向けていた。

電車が池袋駅に止まろうとスピードを下げ始めたそのとき、母親が大声でその男の子にどなりつけると同時に左の頬をピシャリとぶった。私はその音の大きさにびっくりした。

池袋駅のホームに電車が止まると、その男の子の腕をつかみ、引きずり下ろすようにして母子とも電車から降りた。開いたドアのすぐ傍で母親はしゃがみ、その男の子を大きな声で叱り始めた。

「あなたはお金を払っていないのだから電車の中で座る権利はないの。他の人は一日中働き疲れているの。あなたは何もしていないでしょう。」

どうもその男の子は池袋で座れないかと母親に言ったらしかった。男の子は「ごめんなさい。ごめんなさい。」と繰り返し母親に謝っていた。

電車が発車しようとしたとき、その母子は再び電車に乗ってきた。そして私の傍に立った。母親は同じ言葉を繰り返していた。

私は巣鴨駅で降りた。私が座っていた場所にその母親は座った。その男の子をどうするのかと見ていると、その男の子を抱き上げて自分の膝の上に載せた。

確かにその母親が言いきかせていることはことは正しい。しかし・・・。巣鴨駅から自宅まで歩きながら、私は複雑な気持ちにとらわれていた。

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