今年も御巣鷹山に慰霊登山した。8月16日であった。
日航機の墜落事故から35年。遺族は高齢になり、加えて今年はコロナウイルス騒ぎ。事故が起きた8月12日の登山者の数は例年の半数ほどであったと山守の黒澤官一氏から聞かされた。
登山口にある駐車場は昨年10月の台風による崖崩れのため一部が閉鎖されていた。軽井沢から下仁田を通り上野村に来る途中でも何ヶ所か片側通行になっていた。駐車場から事故現場への登山路にも至る所に仮設の階段が設けられていた。また事故現場の端にあるすげの沢地区の慰霊塔は土砂によってほとんど流されてしまっていた。
駐車場から事故現場までは800メートル。昨年は急な坂を登るのが辛かった。今年はもう登る体力はないのではないかと思っていた。ところが、今年はなぜか脚が軽かった。一緒に登った家内も今年は楽だと言った。
毎回、私たちは事故現場をくまなく回る。しかしじっと立ち止まる場所はいつも同じである。
この事故では520名もの人が亡くなった。しかしこの事故現場に立つと、犠牲者の霊は清められているように感じる。遺族や関係者の祈りの賜物であろう。何年か前に浅間山荘事件の現場を訪れた際には、車から出て浅間山荘の前に立った瞬間にめまいと吐き気に襲われた。
50回忌を迎えるまで慰霊登山を続けたいと家内は言う。しかしそれまで私たちは生きていないだろうと思う。たとえ生きていたとしても、この急な坂を登る体力は到底ないであろう。